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鎌倉の長谷寺観音ミュージアムで水彩画展 現代の風景に武士描く

2日に行ったライブペインティングの様子。多くのギャラリーに囲まれながら1時間弱で描き上げた

2日に行ったライブペインティングの様子。多くのギャラリーに囲まれながら1時間弱で描き上げた

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 鎌倉在住の水彩画家・矢野元晴さんの作品展「矢野元晴の世界~長谷寺で武士を描く~」が10月1日、長谷寺の観音ミュージアム(鎌倉市長谷3)で始まり、2日には境内広場でライブペインティングが行われた。

観音堂の前で、矢野さんと完成した水彩画

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 同寺が所蔵する仏像や書物などを展示する同ミュージアム内の一角に、矢野さんが今回のために描き下ろした15点を含む20点の水彩画が並んでいる。現在の同寺の四季折々の風景の中に、鎌倉時代の武士の姿が描かれているのが特徴。

 矢野さんは1988(昭和63)年に鎌倉で生まれ、日大芸術学部卒業後、建築事務所勤務を経て水彩画家に。2017(平成29)年に「鎌倉水彩画塾」を設立し、現在300人以上の生徒を指導している。

 今回の展示は、1月29日に放送されたNHKのテレビ番組「鎌倉LOVEの13人」がきっかけ。同局から矢野さんに、生放送中に長谷寺の境内で水彩画を仕上げてほしいという依頼だった。矢野さんは「単なる風景画では面白くないので、見晴し台からの眺めを背景に、その日のゲストだった大河ドラマ出演者3人を鎌倉時代の衣装で描いてみた」と振り返る。

 実際にはいない人物をイメージして風景に描き足すことはこれまでにもあったが、時代を超えて描く面白さを実感したという矢野さんに、今度は同寺から展示の依頼が届く。「鎌倉は観光地であるとともに、文化の街。長谷寺から世界へ向け、自分の絵を通して文化を発信できる絶好の機会だと思った」と作品作りを始めた。

 境内や周辺をくまなく歩いて、描くポイントを探った。「ここに武士が立ち、どんな日々を送っていたのかを想像しながら描くのは楽しかった」という矢野さん。作品名「門番」では、現在は大きなちょうちんが掛かり、観光客でにぎわう山門の前に武士が寺を守るように立っている作品。矢野さんは「自分でも居合いをやっているので、刀の持ち方などを工夫しながら描いた」と話す。

 2日14時から観音堂横の広場で始まったライブペインティングでは、多くの人が矢野さんの筆使いを見守った。「ちょうど自分の誕生日でもあり、建物の中の十一面観世音菩薩に感謝と祈りを捧げる気持ちも込めた」と矢野さん。1時間弱をかけて完成した作品には、五色幕が掛かる観音堂の前に2人の武士の姿が描かれており、ギャラリーから拍手が起こった。

 矢野さんは「展示した絵を見て、日本人の魂や志を思い出すきっかけになればうれしい」と話し、「作品にはそれぞれテーマやストーリーがあるので、想像しながら絵と対話し、現在と過去を行き来しながら楽しんでほしい」と来館を呼びかける。

 今回の作品制作を機に、同寺以外にもエリアを広げて風景の中に鎌倉時代の人物を描き、画集「鎌倉殿の記憶」(歴史探訪社刊、A4判64ページ、定価2,200円)にまとめた。11月には矢野さんが「念願だった」という技法書「水彩印象画法で風景を描く」(グラフィック社)の発刊も予定している。

 開館時間は9時~16時。入館料300円(長谷寺入山時に別途拝観料400円が必要)。11月6日まで。10月30日14時~15時にも、ライブペインティングを行う。

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