鎌倉の金沢街道沿いに1月25日、カクテルバー「Bush Clover(ブッシュクローバー)」(鎌倉市雪ノ下3)がプレオープンした。
元総菜の店のなごりでショーケースがある。前を歩く観光客向けに、ゆくゆくは軽食やドリンクのテークアウトも始めたいという
同店が立つのは鶴岡八幡宮から東へ徒歩5分のバス通り沿い。「駅から距離がある分、落ち着いた雰囲気。左が酒店、右が精肉店、その隣が青果店と個人商店が並んでいて、初めて見に来たときにすっかり気に入ってしまった」と話すのは店主の奥田広明さん。「人と人との縁がここに導いてくれたような気がする」と振り返る。
奥田さんは故郷の山口県萩市から上京し大手企業で33年間、エンジニアとして働いた。20代後半に横浜関内に行きつけのバーができ、マスターに誘われてカウンターの中へ入ったのがきっかけでバーテンダーとしてのノウハウを身に付けた。
「地形に加え、どこか田舎っぽいところが萩に似ていて好きになった」という鎌倉には5~6年前から頻繁に通うようになり、知り合いが増えていった。カフェ「テールベルト&カノムパン」(鎌倉市扇ガ谷)の常連になると「出会う人から刺激を受け、自分でも何かやってみようという気になってきた」という。
「テールベルト~」店主の結婚パーティーで約50人へのアルコール提供を任されたのを機に、市内の飲食店などから声が掛かり、カクテルのワークショップを開くようになった。店を持たずさまざまな場所でシェーカーを振っていたことから「『さすらいのバーテンダー』と呼ばれていた」と笑顔を見せる。
昨年3月に会社を辞め起業の準備をゆっくり進めた。鎌倉で知り合った仲間が企画した7月のイベントでカクテルのモヒートを提供していると、たまたま訪れた人が不動産会社の営業スタッフだった。
11月に案内された物件は、イートインスペースのある元総菜店。店内は白を基調に清潔感があふれていた。「バーといえば暗く重厚で、中にはクラシックな店もあるが、敷居を低くして女性でも気軽に入れるような明るい店にしたい」と考えていた奥田さんのイメージにぴったりだった。
店舗面積は約26.5平方メートル。席数は12席(カウンター4席、テーブル8席)。今年に入り開店に向けて、ほとんどの作業を1人で取り組んだ。運び込んだ大量のグラスや食器を洗っていると、荒れていた手のひらが悲鳴を上げた。「泣きそうになっていたところに友人が現れ、あっという間に全て洗ってくれて帰っていった。うれしくて、ありがたくて、別の意味で泣きそうになった」と言う。
店内に飾った観葉植物、ウインドーアート、マークや店舗カードのデザインなども鎌倉で知り合った人たちの手によるもの。「ほかの友人たちからアイデアもたくさんもらい、ますます思いの詰まった空間になっていくようだ」と感慨もひとしお。
メニューはカクテル各種(700円~)。ビールは、ハイネケン(600円)、コロナビール(700円)、コナビール(850円)。ウイスキーは、ジンビーム、フォアローゼス(以上700円)、ワイルドターキー(800円)、メーカーズマーク(900円)。ノンアルコールのカクテル(500円~)、つまみ各種(350円~)も用意する。
店名は「ハギの花」を指し、地名の萩と掛けた。「鎌倉と萩は姉妹都市。ここで萩に興味を持ってもらい、実際に足を運び楽しんで、またここでその話を皆さんと共有してもらうシーンを思い描いている。小さい店ではあるが、鎌倉と萩の懸け橋になれたら」と抱負を話す。店内には萩が紹介されたガイドブックなども置いている。
「これで『さすらい』の名を返上できる」と奥田さん。「鎌倉で知り合った人の縁で開くことができた。今度はここからもっと縁を広げていきたい。肩肘張らず、ゆるりと鎌倉時間を楽しんでいただけたら」と来店を呼び掛ける。
営業時間は17時~23時。火曜定休。
2月9日・10日にオープニングパーティーを開く。当日は、奥田さんがイベントで知り合った萩出身のもりえりさんが、萩の名産品を使ったおつまみなどを提供する。