鎌倉小町通りの震災地支援施設「リバイバルスクエア(通称:リバスク)」(鎌倉市雪ノ下1)2階ギャラリーで3月1日、地元在住の水彩画家・矢野元晴さんの水彩画展「記憶の風景」が始まった。
今回のスケッチ旅行で描いたという矢野さんの作品は、ゆったりとした水の表現が目を引く。窓の下の小町通りのにぎやかさを忘れてしまう
東日本大震災雇用・教育・健康支援機構(横浜市中区)が運営する同施設は、国内で起きた災害の被災地支援や風化を防ぐことを目的に募金活動や名産品の販売、写真展示などを行っている。
同機構の田中潤理事長が以前から交流のあった矢野さんに出品を依頼。「震災復興の支援に協力できれば」と矢野さんが快諾し同展が実現した。全ての作品が購入でき、「絵画の好きな方だけでなく、復興支援の志のある方にも購入しやすいように」と通常の半額を設定。その価格の50%を寄付するという。すでに5点が売約済みとなっている。
展示しているのは、昨年スケッチ旅行に出掛けたスペインとポルトガルの風景画を中心に30点。「光と影のコントラストがドラマチック。重厚な建物が時間によって刻一刻と表情を変えるところに魅了された」と旅を振り返る。「やわらかく包み込むような鎌倉の優しい空気感とのギャップが大きく、あらためて鎌倉の素晴らしさを再認識することにもなった」と続ける。
矢野さんは1988(昭和63)年に鎌倉で生まれ、日大芸術学部デザイン科卒。建築デザイン事務所に就職するも、画家になりたいという子どもの頃からの夢をかなえるために退職。水彩画家・笠井一男さんに師事、夜勤のアルバイトをしながら画家への道を歩き出した。
2016年に始めた「2時間半で作品が描ける水彩画ワークショップ」が好評で、翌年には「鎌倉水彩画塾」を立ち上げ、現在は130人もの塾生(生徒)が通うまでに。独自の「水彩印象画法」に注目が集まり、出版物の表紙やポスターの絵を依頼され、大磯や逗子では古いモノクロ写真を元に色鮮やかな水彩画に仕上げる活動に呼ばれるなど忙しい。
9月には鎌倉の風景を集めた画集を出版する予定で「市内を歩いて作品制作も進めている。忙しいのはありがたいこと」と笑顔を見せる。「出版に合わせて、ここでまた作品展を計画したい」とも。
同施設では24日~31日14時から、矢野さんが水彩画を描くデモンストレーションを行う予定。
矢野さんは「鎌倉から水彩画を楽しむ人を広げていくとともに、微力ではあるが被災地を応援し日本を元気にしたい。帰りには1階で被災地の名産品なども購入していただければ」と来場を呼び掛ける。
開催時間は11時~16時。今月31日まで。