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鎌倉在住サーファーが兄の造る日本酒を商品化 「鎌倉GINJIRO」

酒を手に波乗りする姿を浮世絵風に描いたラベルは世界を意識したデザイン

酒を手に波乗りする姿を浮世絵風に描いたラベルは世界を意識したデザイン

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 鎌倉の酒販会社「サニー酒店」(鎌倉市雪ノ下1)が昨年末に売り出した日本酒「NIGHT SURF 純米吟醸 鎌倉GINJIRO」が、新型コロナウイルス感染拡大の影響からの「家飲み」増加もあり、ネット通販の売り上げを伸ばしている。

「木槽(きぶね)」しぼりは、モロミを詰めた酒袋を積み上げ自重で染み出るのを待った後、圧力を掛けて絞るという手間の掛かる作業

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 「年を重ねるに連れ、実家の酒蔵を継いだ兄が造る日本酒のうまさを実感するようになった。より多くの人に知ってもらい、世界中に広げたい」と話すのは安井銀次郎さん。「鎌倉に住んでいる自分なりの方法で発信しよう」と行動に移したという。

 安井さんの実家は、1884(明治17)年創業の安井酒造場(滋賀県甲賀市)。全国的にも稀少となっている木槽(きぶね)を使い、丸2日掛けて絞るという昔ながらの製法を継承し、ラベル貼りなども全て人の手で行っている。現在は兄・利晴さんが5代目として蔵元杜氏(とうじ)を務めている。

 5人きょうだいの末っ子だった安井さんは、高校卒業後にオーストラリア留学を経て、家業を手伝いながら大好きなサーフィンを続けていた。25歳のとき、「生活も海の近くで」と探した企業に就職。職場に近い鎌倉に転居した。以来、仕事前の早朝に、休日に、海に入る生活を続けている。

 「波乗りをしている心地よさと日本酒を飲んだ心地よさが似ていると感じる」ようになり、鎌倉の海と実家の日本酒が結び付いた。

 利晴さんとイメージを共有しながら仕込んでもらったのが同酒。「サラッとした爽やかな口当たりだが、後でずっしり来る飲み心地。さまざまな料理に合い、毎日飲んでも飽きが来ない」のが特徴だと言う。

 自らの名を銘柄にしたが、あえてアルファベット表示にしたのは、「世界中の人に飲んでもらうことを前提にした」戦略。モノクロの浮世絵調イラストや背景の銀色のラベル、黒のビンを採用し、モダンな和のテイストに仕上がった。

 裏のラベルには、酒造りの思いについて書くつもりで利晴さんに相談すると、「造り手ではないお前が言っても説得力がないから書かなくていい」と一蹴された。「そこで、自分の思いを記すことにした」と振り返る。

 「兄は頑固一徹。朴訥(ぼくとつ)としているが、酒に懸ける情熱はすさまじいものがある」と言うが、「自分もサーフィンに打ち込み、突き詰めていくところは兄弟なのだと感じることがある」と笑う。

 昨年末には酒類販売免許も取得し、自宅とインターネットで販売を始めた。「決して安くない価格設定だが全国から注文が入り、リピートしてくださる方も多い。ここのところさらに伸びているのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、自宅で過ごす機会が多くなり、『家飲み』が増えたからではないか」と分析する。

 「行動が制限され、会いたくてもなかなか会えない人がいる。海に入れる環境でない人も遠い海を思う。離れているからこそ大切に思う気持ちに浸り、余韻を味わいながら飲んでほしい」と呼び掛ける。

 鎌倉に暮らしていて気付いたことがあるという安井さん。「甲賀市の柏木神社にある鳩や神紋でもある『三つ巴(ミツドモエ)』の絵柄が、鎌倉鶴岡八幡宮にもあった」。調べると、1190(元久元)年に源頼朝が京都へ向かう際に、鶴岡八幡宮の分霊を祭ったと伝えられていることが分かり驚いた。

 「自分では意識していなかったこの縁も大きなモチベーションになった。甲賀市で兄が造った酒を、今度は自分が鎌倉の地にささげよう」と自らの使命にした。

 同酒は、720ミリリットル、アルコール度16%。価格は3,000円だが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて現在は2,500円で販売中。同社またはインターネットで購入できる。

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