会員制図書室「かまくら駅前蔵書室(通称カマゾウ)」(鎌倉市小町1)で2カ月に1回開かれている「ワークショップのためのワークショップ」の受講者が7月28日、100人に達する。
講師の佐久間芳之さん。湘南で活動する個人向けに開いている「みんなのマーケティング勉強会」は「ワークショップのためのワークショップ」卒業生の参加も多い
「これからワークショップを始めたいと思っている人、すでに始めている人、ベテランまでが一つのテーブルを囲んで学び合う場として、毎回さまざまなジャンルの受講者が集まっている」と話すのは、同施設代表の鈴木章夫さん。「2カ月に1回のペースだが、最初はここまで続くとは思っていなかった」と続ける。
同施設は、鎌倉ゆかりの本と鎌倉が好きな人が集まるユニークなコミュニティーとして8月で4周年を迎える。「年会費1万円を払って会員になってくださるくらいなので、好奇心旺盛な人や意識の高い人も多い。深い知識や特技を持ち、マツコさんやタモリさんに教えたくなる会員さんもたくさんいる」と笑う。
同講座を立ち上げたのは、20代の女性会員からの相談がきっかけだった。経験がないにもかかわらず、渋谷の商業ビルでワークショップを開くことになって慌てているという。「心配だと言うので、会員に声を掛けてトライアルで開いてみたら」と提案した。
募集期間が短かったにもかかわらず参加者が集まり、生の声を聞きながら本開催に向けての検証もできたという。同時に「消しゴミはんこパターンで作る千代紙」というこれまでにないクラフトワークに参加者全員が驚いた。この日を境に会員から「私もワークショップをやってみたい」「あの人がワークショップを開いてくれたら参加してみたい」という声が届くようになった。
実際にワークショップをやってみたいという人から詳しく話を聞いてみたが、「自分のやりたいことばかりが先行している印象で、彼女のようにうまくいかないかもしれないと感じた」という鈴木さんは、会員で企業向けに人材開発セミナーなどの講師をしている佐久間芳之さんに声を掛けた。ちょうどこれから地元の湘南に軸足を置き個人向けに活動したいと考えていたという佐久間さんが賛同し、ワークショップそのものを学ぶ同講座が誕生した。
第1回は2016(平成28)年6月。未経験者のほか、プロのイラストレーターやカメラマン、ベテランのフラワーキャンドル作家など、経験もジャンルも異なる7人が集まった。「こんな風に学んだり、意見交換をしたりする場がなかったのでありがたかった」と受講者は声をそろえた。佐久間さんも「そもそもワークショップは相互に学び合う場。自分にとってもたくさんの気付きがあった」と振り返る。
以降、ブラッシュアップを続けながら開き、今年5月の19回目で受講者は98人に。この間、商業施設「湘南T-SITE」にある「d-labo湘南」とのコラボで出張講座も開いている。
「単にワークショップの参加者を増やしましょうということではなく、『自分の好きをみんなの好きに』という言葉を掲げ共感の場づくりを目指した。1人、2人と共感者が増えることで『自分の好き』がより自身の中で深まっていく、そんな善循環ができてきたのがうれしい」と佐久間さん。
その後、受講者の多くが実際にワークショップを開いた。中には人気講師になったケースもあり、第1回に受講した水彩画家志望だった矢野元晴さんは、現在では市内に画塾を構え約200人の生徒に指導しながら活躍の場を広げている。
矢野さんは「伝えることが少し苦手で不安だったが、上手下手ではなく素直に伝えればいいことに気付き自信が持てた。最初のハードルを越える勇気がもらえて、その後の成長につながったのはこの講座のおかげ」と感謝の言葉を口にする。
当初は受講者の多くが会員だったが、現在は一般の受講者が中心で市外在住者も。鈴木さんは「広告を打ったことはないが、SNSや口コミで知ったという受講者が多い。ワークショップに関する本格的な講座もあると聞くが、気軽に受講できてこれだけ楽しく学べる講座は珍しいはず。これまであるようでなかったところが響いているのでは」と分析する。
佐久間さんは「以前知人から学んだ『相手が大切にしていることを大切にする』という言葉を基軸に、今後は参加者がより独自なものを形にしていくことができるよう『創る人を創る』を実践していきたい」と抱負を話す。
開催時間は10時~14時。参加費は、一般=3,800円、会員=3,500円(弁当とドリンク、後日個別相談付き)。